無職転生21話「ターニングポイント2」感想。

無職転生19話「ルート選択」視聴しました。

原作WEB版のみ既読です。

映像への落とし込みが半端なかった!

 

目次です→

 

ニコニコで視聴しました。

コメントで気がついたことも一緒にまとめます。

 

公式サイトはこちら→

ONAIR | TVアニメ「無職転生 ~異世界行ったら本気だす」公式サイト

 

 

 

アニメ版無職転生の魅力

21話のEDクレジットを見たら、作画監督15人以上という驚異の体制だった。

気合が入っている。その甲斐あってか、作画がぬるぬるだった。

さらに、これだけの人数をまとめると、摩擦もあるだろうに、

これだけのクオリティーを維持しているのが凄い。

制作陣に感謝しかない!

 

ただ、それだけではないと思う。

私は、動きの「意味」の追求が凄いなーと思った。

 

無職転生は全編通して、「意味」を追求しているような気がする。

作画技術により、ただ動きを良くするだけではなく、

「なぜ、その演技をさせなければならないのか?」

という部分にこだわっていると思う。

「より、センスが良く、短く、密度の高い演技ができないだろうか?」

と常に模索して追及しているのが伝わってくる。

これが、無職転生アニメ版の魅力の一つだと思う。

 

特に、21話ではその辺が顕著に現れていた。

本記事では、動きの良さではなく、動きの意味を中心に、

感想を書けたら良いなーと思う。

 

ネタバレなし感想

 

冒頭描写が凄い!

寒々しい雪山。

竜の様に鋭い眼光が我々を見つめている。

ルイジェルドが雪をかぶって倒れている。

エリスは崖に横たわって気を失っている。

目の前には、恐ろしい龍神の影。

ルディーのお腹には穴が空いている。

そして、手から力が抜けて死を表現する。

まさに絶望。唐突な幕引きを冒頭に持ってきた。

我々視聴者も唐突に絶望に叩き込まれる。

 

冒頭描写について、いくつかおかしい部分があることに気づいただろうか?

ルイジェルドはなんで雪をかぶっているの?

本編ではルイジェルドが倒れてから、

ルディーが死ぬまで雪が積もるほどの時間は経ってないはずだよね?

それに、なんでエリスは気を失っているの?

本編では気を失わずにルディーに這いよって来たはずじゃ?

冒頭では、ルディーは腹を刺された即死したという表現だったけど、

本編とちょっと違くない?

本編よりも冒頭の方が明らかに吹雪いているのはなぜだろう?

冒頭と本編で齟齬がある。引っ掛かる。

また、今までは、時系列で内容を語ってきた無職転生である。

この描写の仕方は無職転生らしからぬ演出と思った。

小説を書く上で、冒頭の一行というのはとても骨が折れるらしい。

その一行で、現実世界と小説世界の境を取っ払ってやらないといけないからである。

普通は読者が小説世界に自然と入れるように工夫する。

アニメでも同じことが言えると思う。

冒頭で突き放すようなシーンを持ってくるのはかなり挑戦的だと思った。

絶望感を演出するためというのも勿論あると思うが、

他にも理由があるのではないか。

 

「視聴者を呪いにかけた」というコメントを見つけた。

その解釈は滅茶苦茶面白い!

つまり、冒頭の眼光によって、我々は呪いにかけられ、

本編の方で、ルディーの異物感を強調しているという解釈である!

解釈として正しいような気がする。

なるほどなーと思った。

このシーンを作った人達も凄いが、それを見破ってコメントした人達も凄い!

 

あれ?ちょっと待てよ?

視聴者に呪いをかけただけだと、

冒頭と本編で辻褄が合わない理由にはならなくない?

 

何度も見返してもう一つの仕掛けがようやく分かった。

冒頭のシーンは、ルディーの心象風景を見せているのだ!

つまり、ルディーにとってはそのように見えているのだ、

という表現である。

要は、ヤムチャ視点である。

ルディーの絶望感と唐突に起こった出来事に対する驚愕、

生のあっけなさを表現している。

寒々しい景色は、視聴者を騙すとともに、ルディーの心象を表す風景でもある。

また、死にゆくルディーが徐々に体温を奪われて行く恐怖を、

ルディーと一緒に体感してほしかったのだと思う。

 

冒頭で、エリスやルイジェルドが死んでいるのは、

意識が朦朧としており、周りが見えなくなっていて、

ルディーの認識では二人とも死んでしまったことを伝える役割があるのではないか。

さらに冒頭の、ルディーが胸に穴が空いた直後死んだような描写は、

つまり、それ以降のルディーはほとんど意識が朦朧としていて覚えていないことを、

表現しているのかもしれない。

この辺の描写は、意識が朦朧とする中、

辺りかまわず強い火の魔術を撃つ伏線にもなっている。

 

本編では、オルステッドとの邂逅はあるがままを客観的に描いている。

その証拠に、オルステッドとの邂逅シーンではルディーのモノローグが一切無い。

(モノローグがあるのは、ルディーが死にゆく瞬間だけである。

 周りの世界がどんどんと薄れて行って、

 自分の声だけが頭の中に木霊している状態になる。

 この辺の死の描写も生々しくて良い。)

本編を客観的に描いたことによって、冒頭のシーンが効いてきて、

本編のルディーの異物感が強調されるのである。

このようにして視聴者を操っていたのである。

 

自分が見つけた、ルディーの心象風景説はこのシーンの表層的な理解で、

視聴者への呪いであるというのはさらに深い解釈である。

表層的な理解があるからこそ、

視聴者への呪いであるという深い解釈に繋がったのだと思う。

コメントに敗北感を感じる。悔しい。自分で見つけたかった。

 

また、色々な人の視線の動きや、瞳の表現、モノローグ、情景描写などによって、

誰が何をどう見たのかを端的に表現している。

これらを応用して、このシーンでは視点が素早くコロコロ変わっているのも凄い。

 

また、この演出は今後さらに化けるんじゃないかと期待している。

例えば18話は16話や2話とセットで見ることで、

深みが増すように作られていた。

1話単位で見るよりも、複数の話を比較して見ることで、

より深みが増す作品である。

「現実(ユメ)」というタイトル的に次回とも関係がありそうな気がする。

具体的にどのような演出になるのか考えてみたが、思いつかない。悔しい。

次回を見たうえで、またこのシーンを見返すことになるかもしれない。

このシーンを考えた人は、一つのシーンに二重三重の罠を仕掛ける天才である。

 

 

無職転生アニメ版は主観と客観によって、

視聴者の感情を操る、悪意のある演出が滅茶苦茶上手い。

ブログの辺境で叫んでいるだけなので世間に伝わらないのがもどかしい。

ノローグ、情景描写、異化。

瞳の表現や視線の丁寧な描写。

これらの手練手札を用いて、主観と客観を明確に分けているのだと思う。

また、誰が何をどのように感じたのかを端的に我々に伝える。

さらに、視聴者に魔法をかける。

悪意のある演出である。

私はこれを、無職転生の監督の名前を讃えて、

「岡本マジック」と呼ぶことにした。

まさに、「岡本マジック」が炸裂した回だった。

「岡本マジック」を念頭に置いて、

もう一回始めから見直して欲しい。

滅茶苦茶面白いと思う。

 

無職転生は一見「ん?」と思う様な引っ掛かりを与えてくることがある。

その時は、是非考えてみて欲しい。

より多くのことに気づけるチャンスかもしれない。

 

 

OP

山道を進むルーデウスたちが描写される。

相変わらず、背景や民俗描写が面白い。

中央大陸はアジアっぽいし、

この山脈はアジアのどっかの山脈を基にしているんだろうか?

調べてみたが、分からなかった。

 

 

オルステッドとの対決シーンを直前のシーンと比較させる

オルステッドとルイジェルドの戦いのシーンと、

エリスとルイジェルドとの組手シーンを比較させ、

オルステッドの恐ろしさを強調している。

まずは、エリスとルイジェルドの組手シーンについて。

エリスは剣を使って必死にルイジェルドの攻撃を受け流している。

ルイジェルドは涼しい顔でエリスを鍛えている。

対して、オルステッドとルイジェルドの戦いのシーンについて。

オルステッドはルイジェルドの攻撃を素手で楽々受け流す。

ルイジェルドの槍さばきは、エリスの時よりも格段に速い。

ルイジェルドの表情もエリスの時よりも格段に険しい。

ルイジェルドは的確に急所をつかれて昏倒する。

 

オルステッドがルイジェルドを殴るシーンと、

エリスがルディーを殴るシーンを比較させて、

オルステッドの恐ろしさを強調している。

オルステッドとルイジェルドの力量差は、

エリスとルディーの力量差以上ある、

ということを伝える目的があるのだと思う。

絶望感が凄い。

 

 

魔眼の表現が凄い

ルイジェルドやエリスが緊張している。

それを、察してかルディーも魔眼を発動させてオルステッドを見る。

オルステッドは何重にもぶれて見えた。

複数の未来を同時に見てしまったため、

ルディーは「うっ」と目を抑える。

オルステッドの強さが一発で分かる描写である。

 

ルディーがヒトガミについて喋った瞬間、

オルステッドに腹を刺されるビジョンを見る。

未来を変えるように、ルイジェルドが割り込む。

この表現も凄い。

 

魔眼によってルディーは、

オルステッドにあらゆる個所を攻撃されて死ぬ未来を見た、

というのを、未来視の一瞬の血しぶきと、ルディーの動きだけで表現している。

凄いなーと思った。

 

ディスタブマジックと結界を比較させる

20話で、結界に捕らわれたルディーは魔術を使えなくなる。

火魔術がふっと空気中に霧散するような表現であった。

21話で、ディスタブマジックが出てくる。

ディスタブマジックによってルディーの魔術が打ち消される。

20話と同様に、火魔術がふっと空気中に霧散するような表現であった。

20話の描写を連想させることで、説明が無くても、

ディスタブマジックとはどういう魔法なのか分かるのが凄い!

 

 

ディスタブマジックに対応したルディーの動き

ディスタブマジックによって火魔術が使えなくなったこと。

ディスタブマジックには有効範囲があること。

ルディーは咄嗟の機転で、オルステッドに気づかれないように、

上半身で腕を隠しながら、風魔術で有効範囲から逃げ出したこと。

この様子を見て、オルステッドは「器用な奴だ。」と言う。

オルステッドは、有効範囲外でも相手の出方を見れるように、

ゼンリュウモンを開いたこと。

これらを、ほんの数分で表現している。

アニメーションの強みを生かした演出が凄い。

こういうセンスのある表現ができてしまうのは、嫉妬してしまう。

 

 

土魔術で状態を起こす

ルディーは肺を潰されている。

腹圧がないと、力が入らないので、

自力で起き上がることはできない。

よって、土魔術で状態を起こしている。

普通の作品なら、主人公の必死さとカッコよさを表現するために、

腕の力で何とか起き上がるという描写をしてしまうだろう。

細かい部分まで考え抜かれていて、物凄く興奮する。

 

 

今のはメラゾーマではない、メラだ。

苦し紛れにルーデウスが放った、火の魔術の描写が凄かった。

普通の火の魔術を空気を送り込んで圧縮することで凄まじい威力にしている。

 

まず、色に着目してみよう。

赤→黄→緑→青→紫

という感じで遷移している。

炎の色は温度によって変わる。

炎の温度がどんどんと高まっていることが色で分かる。

 

次に、周りの様子を見てみよう。

熱により、一瞬で周りの氷が蒸発する描写がある。

ルディーがやけどしない理由はちょっと分からない。

電磁力バリアーでもはっていたのかなー。

 

さらに、ガスの送り込みに注目してみよう。

始め、内炎と外炎に色のむらがあった。

空気を送り込みつつ、くるくる回転させることで、

内部に空気を送り込むことで、一様な色に変化して行く。

 

最後に、大きさに注目してみよう。

空気を送り込みつつ、圧縮することで高温にしている。

凄まじい圧力と温度になっていると思う。

炎が紫になった時点で内部から爆発して膨張する。

ぐわっと火の魔術が大きくなる。

おそらく、その爆発を魔術で保って、ある程度の大きさにとどめている。

 

ここまでの描写から、

この火魔術は核融合を意識して作っていることが分かる。

要はプロトン砲みたいなものだと思う。

(砲と言ってしまうと、語弊があるかもしれない)

ルディーが作った火の魔術は、

エネルギーを魔力によって内部に閉じ込めている描写が凄いと思う。

魔術によって磁力を発生し、

プラズマを閉じ込めて、紫の火を制御していたのかなーと思っている。

そこまで詳しくないが、周りでピカピカしている光も何か意味があると思う。

これをやすやすと受け止めるオルステッドの恐ろしさよ。

 

物理・SFニワカなんで間違っているかもしれない。

もし間違ってたら、教えてください!

 

ちなみに、風魔術でガスを送り込む発想は、

ギュムロニンバスで、上昇気流を発生させる部分が基礎になっていると思う。

また、魔術を圧縮する発想は、

土魔術でフィギュアを作るために圧縮した発想が基礎になっていると思う。

 

この作品はファンタジー作品である。

同時に、この作品はSF作品でもあると思う。

細かい過程や仕組みを分かるように描写する所が、

SFっぽいなーと思う部分である。

 

 

ゼンリュウモン

「凄まじい魔力量だ。」という言葉と、魔術が消える描写だけで、

ゼンリュウモンとは繰り出された魔術を吸い取る呪文であることを表現している。

 

 

エリスにとって火の魔術とは?

エリスにとって、火の魔術はどういうものなのだろうか?

第5話で、ルディーが夜空に打ち出した火の魔術にあこがれを持つ。

第6話で、エリスは魔術が苦手だったが、ルディーに教わって、

初めて苦手なことに挑戦して、火の初級魔術を習得した。

このように、火の魔術とはルディーとの絆を表している。

ルディーへの憧れ、畏敬、恋、愛を象徴している気がする。

EDのラストで、火の魔術が空にぱっと美しく光って消えていくのは意味深である。

 

また、火はよく生命の象徴として描かれている。

夜空にぱっと美しく光って消えて行く火の魔術は、

生命の儚さを思わせる。

ずっと一緒に生きていくと思っていたルディーが、

突然死にかけたというのは、エリスにとって物凄い衝撃だったに違いない。

 

この辺のお話は、第二クールが終わった後に詳しく書くと思う。

 

 

コメントで気がついた。

ルディーが死にゆく間際のシーン。

第1話冒頭を意識して作られている。

光を失った瞳をドアップにしたカットも、

徐々に薄れていく意識も、

心残りがあることも、

第1話に似ている。

第1話から、どう成長したのか比べてもらうための演出だと思う。

これは次回「現実(ユメ)」にも効いてきそうな描写である。

 

 

胸に空いた穴

実は、背中からのカットでは、穴が空いていない。

つまり、胸に穴が空いている描写は、

前世の男の主観的な自己のイメージであることが分かる。

未練は無いと口では言いつつも、

どこかに心残りがあることを示していると思う。

これは次回「現実(ユメ)」にも効いてきそうな描写である。

 

 

本気を出せない

無職転生では、沢山のキャラクターが必死に今を生きていることが描写される。

それに対して、オルステッドは本気を出せないらしい。

世界最強の男が、本気を出せず、誰からも嫌われるとは皮肉である。

 

 

瞳の表現

ニコニコのコメントで気づいた。

第1話に出てくる前世の男と、

第21話に出てくる前世の男を比べると、

明らかに瞳の色が違う。

第1話に出てくる前世の男の瞳の色は、

日本人的な黒である。

それに対して、第21話に出てくる前世の男の瞳の色は、

ルディーと同じ緑色である。

つまり、ヒトガミとの夢に出てくる自分の体は、

自分に対する認識を具現化したものであることが分かる。

そして、自分に対する認識がちょっとずつ変わってきていることを示している。

 

無職転生アニメ版では、瞳の表現に物凄くこだわっている。

その人が見た光景だという事を強調するためだけに、

左右反対の鏡像をわざわざ描いたりする。

21話でも瞳に映る鏡像描写があったと思う。

また、瞳の色や視線の動きにも並々ならぬこだわりがある。

瞳の表現にこだわる意味は何だろうか?

誰が何をどう見たのかというのを強調するためだと思っている。

他にも、何か意図があるのだろうか?

 

 

超絶ネタバレあり感想

 

ここからは、超絶ネタバレ注意。

未読は読んじゃダメ!

原作既読者向けに書いている↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さい

ナナホシが登場したよー!やったね!

私は理系三人衆のザノバ、クリフ、ナナホシが大好きである。

いやー嬉しい!

 

ナナホシの小ささの強調が面白かった。

ナナホシの背丈をあえてルーデウスと同じにすることで、

ナナホシの小ささを表現している。

この世界に転生し、成長して馴染んできているルーデウスと、

この世界に転位し、成長が止まって、早く戻りたいと考えるナナホシの対比である。

 

この世界に転生し、成長して馴染んできているルーデウスというのは、

次回のタイトル「現実(ユメ)」ともリンクしそうな気がする。

 

原作では、ナナホシの方が気になって呼び止めたという描写だったと思う。

アニメ版では、ナナホシの黒髪が強調されており、

ちゃんと、アニメで描写されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に

次回は、「現実(ユメ)」というタイトルらしいです。

どんな、内容になるのでしょうか?

ルディーにとっての旅、エリスにとっての旅、ルイジェルドにとっての旅。

それぞれの総括の様なお話になるのかなーと思っています。

特に、エリスにとっての旅の総括がどのような表現になるか注目です。

また、これまでアニメ版無職転生では、

ルディーの転生者であるがゆえの歪みや、

ルディーとそれ以外で見えている世界の違いを描いてきました。

その辺をからめて描いてくれたらなお嬉しいです。

ED映像とも関連がありそうです。

EDについては、まだ自分の中で言語化できていないので、

第二クールが終わって、まとまったらまた記事に書こうと思います。

楽しみです!